天界からの使者
運光星方教会シロリン大聖堂、謁見の間――
結局、倉臼はシスターに無理矢理腕を引っ張られ、大聖堂へ連れ戻される形となり、駄々を捏ねながらパチンコ店を後にした。
これに苦笑いで送り出す店員⋯⋯
どうせ、執務室の机の上に滞留している書類のサインを促されるだけだろう⋯⋯そう思っていた。
しかし、連れて来られた場所は、二階にある「謁見の間」だった。
すると、そこには⋯⋯
まるでアルビノのように白く透き通り、美しい肌と銀髪をした⋯スーツ姿の美男子が、シロリン大聖堂前の大広場を見下ろすことのできる窓辺で、神妙な面持ちで外を見つめるように佇んでいた。
「お待たせしました!只今、本人を連れて参りました!」
シスターがそう声をかけると、スーツ姿の美男子が振り返る。倉臼もはっと我に返るよう、表情を強張らせた。
「倉臼大司教、ご無沙汰しております。突然の訪問、お許しください。今日は天界から親書を持って参りました」
美男子は⋯⋯
大天使ガブリエルだった。
二人はテーブルの席に着席すると、早速、親書の手渡しが行われた。
封蠟に押された紋章から、倉臼は⋯⋯天界からもの、神の意思であることを明白に感じる取ることができた。開封した書状を広げる際、緊張が走る。
倉臼が予見して内容だった⋯⋯
「倉臼大司教⋯⋯誠に言いづらい話なのですが⋯⋯いや、もちろん、現場のサンタクロース達は大変だと思います。みんな、頑張っていると思います。でも、誤配⋯⋯なんか、多過ぎません?」
予てからクリスマス・プレゼントの誤配が問題視されていたのだ。
そして⋯⋯
とうとう、天界の懲罰委員会の是正勧告が入ったのだ。
終始、沈黙したままの倉臼⋯⋯
悪い子のところまでにクリスマス・プレゼントが配達されてしまうのは、確かに問題である。
「ガブリエル殿、改善のために時間を少し頂けないでしょうか?」
「もちろんです。それで⋯⋯今年のクリスマスまでに⋯⋯どうです?可能ですかね?天界としても⋯⋯ちょっと、これ以上は⋯⋯」
「一年以内で⋯⋯わ、わかりました。ちょっと、頑張ってみます」
大天使ガブリエルは席から立ち上がると、倉臼に深々とおぎじをした。
つづく