組織的霊障との戦い
エシャロットが叫ぶ⋯⋯
「間違いないわ! タイラーさんよ!」
しかし、穂都はこれに対して困惑する。
「私にはハゲたおっさんのイメージしか感じられなかったわ⋯⋯」
「それはまやかしよ! 今さっき飛んで行ったヘリコプターがそうよ!」
「えっ? 今、何かがこの近くの空を通過して行った感じはしたけど⋯⋯ヘリコプターの音なんて⋯⋯してなかったよ」
穂都はエシャロットの宿るフランス人形を抱きかかえながら、屋根から降りて自室へ戻る。そして、人形をいつもの定位置に戻した。
「よいしょ⋯⋯じゃ、今日はおやすみ! エシャロット!」
「うん、おやみす! 」
机に向かうと、パソコンの電源を入れてネットにアクセスした⋯⋯
穂都自身もどうにも気になって致し方なかったので、この不思議な感覚について調べ始めた。
「あのイメージはThis Manとも違うわ⋯⋯タイラーって人⋯⋯エシャロットが以前、インドにあるチベット密教の寺院にいた時の仲間よね⋯⋯あのハゲたおっさんとエシャロットの過去にどんな関係が⋯⋯」
その様子を、棚の上から見つめるエシャロット⋯⋯
「あまり根を詰め過ぎないでね⋯⋯」
フランス人形の目が静かに閉じて行った。
穂都はオカルトや都市伝説に関するサイトをあちこち見て回るうち、ある情報に辿り着いた⋯⋯
「ミステリーヘリコプター?心霊ヘリコプター?UFO回収ヘリコプター?随分と古いオカルトネタね⋯⋯〇追純一スペシャル?」
一方、都内の別の場所でもこの動きを察知していた者がいた――
東京タワーから池袋方向へ直進すると⋯⋯その中間地点は、ちょうど市ヶ谷となる。防衛省のある場所だ。
「今、妙な気配を感じたな⋯⋯これは⋯⋯ブルース・ウィリス!? しかし、それに混じって⋯⋯米軍に偽装したロシアか? スペツナズの匂いがする」
男の名は浮島譲司⋯⋯自衛隊の対超常現象特殊作戦群に所属する陰陽師、霊能者の士官である。
国内最高⋯いや、世界対抗レベルの霊力を持つ男だ。その男を前にして⋯⋯偽装された念に意味はない。この時点では⋯⋯浮島の存在は米軍側にすら知らされていなかった。
「調査の必要がありそうだな⋯⋯」
浮島はそう言うと、自席から立ち上がり、庁舎の屋上へ向かい始めた。日本は今⋯⋯海外からサイバー攻撃のような霊障も引き起こされていたのだ。
つづく