ツインレイ

投稿日 2025.01.29 更新日 2025.01.29

「そう言えば⋯⋯どこへ出るんだ?」

 ポンスケがそう吐露する⋯⋯

「一時的ですぐに戻れるって話だったが⋯⋯たぶん、名古屋だろう」

 タイラーがそう答えると、同行していた米軍関係者が叫ぶ。

「ここは東京じゃないですか! 私も横田基地に赴任していたことがあるので⋯⋯ちょっと、懐かしいですね! 六本木によく遊びに行きました!」

 眼下に東京タワーが見える。

 直後、タイラーは不安そうな面持ちに変わる⋯⋯

「ロシア大使館⋯⋯近くにあるよな」

「気になるか? 今は心強い仲間が一緒だろ?」

 ポンスケがタイラーの過去を察し、不安感を紛らわそうと気をつかう。

「俺が神様タルパー事件を企てた際、東京のロシア大使館に駐在していたんだが⋯⋯屋上に心霊探知機が設置されているのを見たことがある。そいつは言わば、オカルト版エシュロンみたいなもんだ」

 それに対して米軍関係者はこう答える⋯⋯

「そいつは想定済みです。ロシア側に察知されても、我が国が誇る世界一カッコいいハゲ、ブルース・ウィリスのイメージしか感じ取れないよう、先程説明した特殊コーティングに念封じしてあります」

「なるほど、プーチンの嫉妬心を煽るのか⋯⋯」

 これに納得するポンスケ。

 タイラーとポンスケ一行はそのまま池袋方向へ直進飛行し続けた。もう、間もなく⋯⋯自分たちの世界へ帰還するための霊道が出現するはずである。

 一方、その地上では⋯⋯

 一人の少女が自宅の屋根の上で、夜空の星を仰ぐように眺めていた。彼女の名は遠井穂都⋯⋯強い霊感を持つ女の子だった。両手には美少女のフランス人形を抱きかかえていた。

「感じる⋯⋯何かが飛んで来る!」

「これは⋯⋯タ、タイラーさんの気だわ!タイラーさんの気を感じるわ!」

「どうしたのエシャロット!」

 穂都が両手で抱きかかえている人形はただの人形ではなかった。挿入型タルパと呼ばれる思念体が封じれたものだった。

 厳密には⋯⋯

 彼女のイマジナリーフレンド、エシャロットが乗り移っているものだ。

 しかし、そんな地上での小さな変化を知る由のなかったタイラーとポンスケ一行が乗るヘリは、予定通り出現した霊道の中へ入って行き。穂都の頭上から気配を完全に消した。

つづく