訓練
それからさらに一カ月の月日が流れた――
タイラーが管理している山荘近くの森の中に、悪い子の住む家に見立てた建屋がいくつも並んでいた。
「まるで闇バイトだな⋯⋯」
通常のカウンターテロ、人質救出作戦とは違う。
タイラーがバールのようなもので窓をこじ開けると、すぐさま背後の仲間たちを建屋内へ突入させ、クリスマス・プレゼントの捜索を行わせる。
目標は一分以内だ⋯⋯
一分以内にクリスマス・プレゼントを見つけ出し没収せねばならない。それが難しい場合は破壊あるのみだ。
「来週末はいよいよ⋯⋯試しとは言え実戦だ。大切な一戦になる」
ポンスケは腕を組み、訓練の様子を注視⋯⋯焦りのような表情を浮かべ、そう呟いた。
するとそこへ⋯⋯
独特なエンジン音を鳴り響かせ、ハーレダビットソンに乗った一人の老齢なサンタクロースが訓練キャンプにやって来た。
「お、やっとるな!」
これに目が点になるポンスケ⋯⋯
よく見ると後ろには男の娘化したゴンが乗っていた。
「文成おじいちゃんがやって来たよ!」
「ほっほほほほほ、わしが来たからにはもう安心じゃ!」
懐からダイナマイトのようなものを取り出し、口に咥えていた葉巻の火で導火線に着火すると、そのまま建屋に向かって突進⋯⋯それを窓の中へ放り投げたのだ。キャンプ内にいた誰もが度肝を抜かれ、全員、地面に伏せた。
「⋯⋯アレ、なんだ?爆発しないぞ」
訓練に参加していた一人の隊員がそうつぶやく。
次の瞬間⋯⋯建屋内は真っ黄色な怪しい煙に満たされ、しばらくすると、隙間からもモクモクとあふれ出し始めた。
「ほっほほほ、どや! 笑気ガスと自白剤をブレンドした発煙筒や!」
すると、その建屋内で次の訓練準備のため、悪い子を模したマンターゲットやクリスマス・プレゼントを模した箱の設置作業していた別の隊員が、ゲラゲラと笑いながら外に出て来て、このように大絶叫した⋯⋯
「俺は!! 昨日の夜!! 湯本の〇ー〇〇〇〇に行ってきました!!」
「あ、あいつ⋯⋯昨日の夜、下の温泉街にある郵便局に行って来るって言ってなかったか? 本当は〇〇に行ってきたのか? なんだよー、俺も誘えよ!」
これに別の隊員が憤慨する。
つづく