訓練

投稿日 2025.01.25 更新日 2025.01.25

 それからさらに一カ月の月日が流れた――

 タイラーが管理している山荘近くの森の中に、悪い子の住む家に見立てた建屋がいくつも並んでいた。

「まるで闇バイトだな⋯⋯」

 通常のカウンターテロ、人質救出作戦とは違う。

 タイラーがバールのようなもので窓をこじ開けると、すぐさま背後の仲間たちを建屋内へ突入させ、クリスマス・プレゼントの捜索を行わせる。

 目標は一分以内だ⋯⋯

 一分以内にクリスマス・プレゼントを見つけ出し没収せねばならない。それが難しい場合は破壊あるのみだ。

「来週末はいよいよ⋯⋯試しとは言え実戦だ。大切な一戦になる」

 ポンスケは腕を組み、訓練の様子を注視⋯⋯焦りのような表情を浮かべ、そう呟いた。

 するとそこへ⋯⋯

 独特なエンジン音を鳴り響かせ、ハーレダビットソンに乗った一人の老齢なサンタクロースが訓練キャンプにやって来た。

「お、やっとるな!」

 これに目が点になるポンスケ⋯⋯

 よく見ると後ろには男の娘化したゴンが乗っていた。

「文成おじいちゃんがやって来たよ!」

「ほっほほほほほ、わしが来たからにはもう安心じゃ!」

 懐からダイナマイトのようなものを取り出し、口に咥えていた葉巻の火で導火線に着火すると、そのまま建屋に向かって突進⋯⋯それを窓の中へ放り投げたのだ。キャンプ内にいた誰もが度肝を抜かれ、全員、地面に伏せた。

「⋯⋯アレ、なんだ?爆発しないぞ」

 訓練に参加していた一人の隊員がそうつぶやく。

 次の瞬間⋯⋯建屋内は真っ黄色な怪しい煙に満たされ、しばらくすると、隙間からもモクモクとあふれ出し始めた。

「ほっほほほ、どや! 笑気ガスと自白剤をブレンドした発煙筒や!」

 すると、その建屋内で次の訓練準備のため、悪い子を模したマンターゲットやクリスマス・プレゼントを模した箱の設置作業していた別の隊員が、ゲラゲラと笑いながら外に出て来て、このように大絶叫した⋯⋯

「俺は!! 昨日の夜!! 湯本の〇ー〇〇〇〇に行ってきました!!」

「あ、あいつ⋯⋯昨日の夜、下の温泉街にある郵便局に行って来るって言ってなかったか? 本当は〇〇に行ってきたのか? なんだよー、俺も誘えよ!」

 これに別の隊員が憤慨する。

つづく