至上命題

投稿日 2025.01.25 更新日 2025.01.25

 リーは黙々と座布団を作り続けていた――

「ああ、ランカちゃんか⋯⋯久しぶりだな。兄さんも元気そうで何よりだ。忙しそうなので、またにするわ」

 タイラーはそう言うと、ランカにガトー富士の土産袋を手渡す。

「えー!! 泊まって行けばいいじゃん!!」

「はは、折角だけど⋯⋯ちょっと挨拶に来ただけだ。俺もこれから仕事で大司教様と合わなくちゃいけないんでね」

 親指で背後のシロリン大聖堂を指差す。

「そっか、大変なんだね」

 ランカは受け取った土産袋を抱えながら残念そうな顔をする。

「じゃ、またな」

 タイラーはそう言い残すと、シロリン大聖堂の裏門通用口へ向かい、そのまま中へ消えて行った。

 守衛で訪問手続を済ませると、そのまま倉臼のいる執務室へ通された。

 すると⋯⋯

 すでに何人かの先客がおり、デスク前の応接テーブルを取り囲むように、何か打ち合わせのようなものが行なわれていた様子だった。

「こちらがタイラーさんです」

 倉臼が椅子から立ち上がると、タイラーと挨拶を交わすことなく、先客らに不意に紹介された。

 これに少し戸惑うタイラー⋯⋯

「あっ、すみません。タイラーさん。こちらはクリスマス・プレゼント誤配問題の件で集まっている方々です」

 一人は大天使ガブリエル、もう一人はフィンランド代表のサンタクロース、もう二人は国防省の武官と文官、さらに残る一人は⋯⋯

「なんでここに米軍の将校がいるんです」

「彼は国防省内に駐在している連絡将校で、NORADのサンタ追跡プロジェクトの裏の責任者ですよ」

 国防省の武官らしき男がそう説明した。

 大天使ガブリエルが軽い咳払いをすると、本題のようなものを切り出して来た。

「さて、一年中クリスマスを祝う国、ガ島として⋯⋯シロリン大聖堂のクリスマス・プレゼント配送事業許可更新は至上命題になると思います」

「タイラーさん⋯⋯早速で申し訳ないんだが、試しに一件だけいい。実戦を見せてくれないか?必要なものはすべて揃えて提供する」

 今度は国防省の文官らしき男がそう述べた。

つづく