至上命題
リーは黙々と座布団を作り続けていた――
「ああ、ランカちゃんか⋯⋯久しぶりだな。兄さんも元気そうで何よりだ。忙しそうなので、またにするわ」
タイラーはそう言うと、ランカにガトー富士の土産袋を手渡す。
「えー!! 泊まって行けばいいじゃん!!」
「はは、折角だけど⋯⋯ちょっと挨拶に来ただけだ。俺もこれから仕事で大司教様と合わなくちゃいけないんでね」
親指で背後のシロリン大聖堂を指差す。
「そっか、大変なんだね」
ランカは受け取った土産袋を抱えながら残念そうな顔をする。
「じゃ、またな」
タイラーはそう言い残すと、シロリン大聖堂の裏門通用口へ向かい、そのまま中へ消えて行った。
守衛で訪問手続を済ませると、そのまま倉臼のいる執務室へ通された。
すると⋯⋯
すでに何人かの先客がおり、デスク前の応接テーブルを取り囲むように、何か打ち合わせのようなものが行なわれていた様子だった。
「こちらがタイラーさんです」
倉臼が椅子から立ち上がると、タイラーと挨拶を交わすことなく、先客らに不意に紹介された。
これに少し戸惑うタイラー⋯⋯
「あっ、すみません。タイラーさん。こちらはクリスマス・プレゼント誤配問題の件で集まっている方々です」
一人は大天使ガブリエル、もう一人はフィンランド代表のサンタクロース、もう二人は国防省の武官と文官、さらに残る一人は⋯⋯
「なんでここに米軍の将校がいるんです」
「彼は国防省内に駐在している連絡将校で、NORADのサンタ追跡プロジェクトの裏の責任者ですよ」
国防省の武官らしき男がそう説明した。
大天使ガブリエルが軽い咳払いをすると、本題のようなものを切り出して来た。
「さて、一年中クリスマスを祝う国、ガ島として⋯⋯シロリン大聖堂のクリスマス・プレゼント配送事業許可更新は至上命題になると思います」
「タイラーさん⋯⋯早速で申し訳ないんだが、試しに一件だけいい。実戦を見せてくれないか?必要なものはすべて揃えて提供する」
今度は国防省の文官らしき男がそう述べた。
つづく