サンタクロースたちの挽歌
運光星方教会シロリン大聖堂、大司教執務室――
倉臼は頭を抱え込んでいた。
とりあえず、北海道、東北、関東甲信越、北陸、中部⋯と、各エリアを代表するサンタクロース達を執務室へ呼び集めた。
「⋯⋯と言う訳で、クリスマス・プレゼントの誤配問題を、年内までにどうにかする必要性に迫られたんや。マジ、どうしよう⋯⋯」
関東甲信越代表のサンタクロースが重い口を開く⋯⋯
「毎年、できるだけ悪い子のところへ届けないよう努力はしておりますが⋯⋯悪知恵を働かせる子が本当に多くて⋯⋯正直、無理です。疑心暗鬼や良心の呵責に苛まれながら配達を続けているサンタクロースも多いんですよ!」
そして、倉臼に詰め寄るよう、最後にこう付け加えた⋯⋯
「中にはそれが原因で精神を病んでしまい、サンタクロースを引退した者までいるんですよ! 現場も現場で疲弊しているんですよ!」
クリスマス・プレゼント誤配問題――
それは⋯⋯
なぜか、良い子のところへは届けられず、悪い子のところばかり誤って配られる問題である。
サンタクロースはお人好しな性格をした者が多い⋯⋯
前世はバカ正直に純粋真っ直ぐな人生を歩んで来た者たちばかりだ。
そう言う人たちが多かったのだ。
ちなみに、そうした心構えに感銘した閻魔大王が⋯⋯天国行きの判決を述べるのでなく、サンタクロースにスカウト、推薦したりしている。
これがサンタクロースの正体である。
しかし、疑うことを知らず、すぐに人を信じてしまう。
自己顕示欲が強く悪目立ちする悪い子の言葉に騙されてばかりで、肝心の良い子をスルーしてしまっていたのだ。
そこへ大阪代表のサンタクロースが意見を述べる⋯⋯
「どうやろ? 誤って配達したもんを回収するのは? そういう専門部隊を作ったらどうや? もう、そう言う残酷なこと⋯⋯平気でできる性格をしたもん、別に集めて別に作ればええやろ」
倉臼はこの意見に強い関心を示した。
「クリスマス・プレゼント回収班⋯⋯か。なるほど⋯⋯そうだな」
もちろん、数的にすべての誤配に対応するのは無理だ。
しかし、毎年、何割かの誤配に対して⋯⋯そうした制裁的な行為を行えば、悪い子に対する牽制、抑止力になるだろう。
これにより誤配も年々減って行くだろう。そう目論んだものだ。
つづく