12月25日に生まれて
ガトー公国首都、ウィルクス市の中心街ーー
ここはサンタクロースたちの聖地、運光星方教会シロリン大聖堂である。若き大司教⋯⋯いや、破壊的聖職者、倉臼文磨が仕切る教会だ。
今日も、教会本部の長老たちの忠言をガン無視して、我が道を往く⋯⋯パチンコだ! 職務中、聖堂裏門からこっそり裏路地へ抜け出し、シロリン大聖堂から歩いて数分のところにあるパチンコ店へ向かうのだ。
倉臼大司教が足繫く通い詰めていたパチンコ店は⋯⋯奇しくも「パチンコ大聖堂」と言う屋号を掲げていた。
倉臼は入店すると台の品定めを始めた⋯⋯
「おっ、こいつは出そうだな」
そして⋯⋯20分後に台は爆裂、確変モードへ突入した。
そう、倉臼は聖職者でありながらパチプロでもあったのだ。しかし、この日は何かが違っていた。突然、パチンコ玉が入賞口手前の釘の間で詰まり始め、台が回せなくなる事態に遭遇したのだ。
「おい! コラ! なんじゃコレ!」
倉臼は怒り狂い台を叩く⋯⋯
「はい! はい! 今、直しますから台を叩かないで!」
すぐさま若い男性店員が駆け寄って来た。
「はよ、直さんかいボケ! 回っとる最中やんけ!」
「あんた、本当に聖職者か⋯⋯」
呆れ顔になる店員⋯⋯
店員はズボンのポケットから鍵を取り出し、台のガラスパネルを開錠して開くと⋯⋯素早く玉の流れを良くして、すぐさまパネルを閉じて施錠した。それは神業のような一瞬の出来事だった。
再び入賞口へ玉を流し込むことができるようになり機嫌良くなる倉臼⋯⋯
「おお、流石やな!」
「どういたしまして! 台は叩かないでくださいね」
まぁ、いつもことである。店員も馴染みの太客であることから、多少のことは大目に見ていた。
すると、そこへ大聖堂に従僕していた一人のシスターが血相を変えながらパチンコ店内に乱入して来た。
「大司教様! 倉臼大司教様! どこにおいでですか!」
「おお、ここや。なんだどうした?」
「ああ、そこにおいででしたか⋯⋯本当に困ったお方ですね。今、聖堂内で大変なことが起きています! 早く戻って来てくれませんか?」
眉間に皺を寄せて、露骨に嫌な顔をする倉臼⋯⋯台は爆裂中である。
つづく