霊能者の確信
池袋駅東口にある、とある雑居ビルの地下一階ーー
一人の女性占い師が営むサロンがあった。
その占い師の名は⋯⋯成吉シシル。輸入雑貨の会社を経営する傍ら、占い師としても活動していた。地元の女子学生の間で人気の占い師だった。
しかし、それは表向きの顔に過ぎなかった⋯⋯
裏の顔は、浮島の所属する部署の裁量権で雇われた外部協力者だった。
その任務は⋯⋯主にオカルト界での監視活動となるが、時折、浮島の直接指示で動くこともあった。
「あちら側の世界へダイブして探って欲しい?」
「そうだ。米国、ロシア、中国⋯⋯どうやら、あちら側の世界でも活動拠点を築きつつある様子だ。夜な夜なダイブして探って来て見て来てくれないか?」
営業時間終了後の占いサロンの待合室のテーブルで、浮島と成吉が今後の活動方針について打ち合わせをしていた。
そこにはもう一人の女性がおり、終始、浮島と成吉の対話を見守り続けていた。その女性の名は⋯⋯林千夜。浮島の出身大学の大学院生で、現在、博士課程の工学研究科に在籍している学生であった。
専門は電子工学で心霊探知レーダーや超能力無力化システムの開発を手掛けるなど、技術面で浮島の活動をサポートするスタッフでもあった。
「わかったわ。今晩からあちら側の世界へ行って見るわ」
「ところで、数日くらい前⋯⋯池袋一帯に向かって飛翔する、奇妙な霊的存在を感じ取ったんだ。君の方はどうだい?」
「そう言えば⋯⋯ちょっと失礼な言い方になるかもしれないんだけど、ハゲたおじさんが飛んで行ったような⋯⋯そんな強烈な感覚に襲われたわ」
「⋯⋯」
ロシア大使館にいる連絡役からは⋯⋯公安警察を通じて、自分たちとの関係性をはっきり否定する回答を得ていた。連絡役は必要以上に多くを語ることはないが⋯⋯決してウソをつかないのが諜報の世界における鉄則だった。
浮島はあごに手をあてて考え込む⋯⋯
「もしかして、スペツナズの元隊員か?ワグネルが日本で活動する意味はないから⋯⋯超能力部隊から脱走した反プーチン派の元隊員たちか?」
浮島は次第にそう確信して行くようになる。
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無音響室のような作りをした部屋の中央で、イスに座らされた状態で、両手両足を拘束されていた男がいた。
目隠しと猿ぐつわをはずされると、恐怖で震える小さな声で⋯⋯
「こ、ここはどこ的?」
ヘソ・ライト博士である。
つづく