霊道拉致事件
諜報の世界は女心のように繊細で複雑だ⋯⋯
日々、敵対する者同士、腹の探り合いをしている訳だが⋯双方にとって有益でない状況、公になっては困る問題が発生することもままある。
そこで⋯⋯そうした予期せぬ事態の発生を未然に防いだり、事後処理をするため、敵対する者同士であっても、連絡を取り合い、互いの活動を調整するための決まり、ホットラインのようなものはあった。
多くの場合、そのための連絡役が大使館などに配置され、公安警察とやり取りがされていた。
基本、公安警察と自衛隊は互いに警戒し合う間柄となるが⋯⋯
霊能力戦は日増しに行われるようになっていた。
状況は切迫していたため、浮島は公安警察とのパイプ作りに奔走、オカルト分野に限り信頼関係を築くことができていた。
しかし、浮島がこのパイプを利用して探ろうとした結果、他方で深刻な問題を引き起こしていたことは想像だにできない話だった。
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タイラーの山荘ーー
「科学者が行方不明?」
国防省の担当官からポンスケにそのような知らせが入る。
先日、スターゲイト・システムを通じて、あちら側の世界へ行った科学者のうち、約一名が⋯⋯帰路、こちら側の世界に戻って来れず、そのまま次元空間の中でロストしてしまったとのことだった。
その科学者はヘソ・ライト博士だった。そう、トットフォーの夫である。
米国側と捜索を進めた結果⋯⋯
どうやら、米国と同じ世界の別の場所へ飛ばされてしまった痕跡を確認したのだ。その別の場所とは⋯⋯
豪州領、クリスマス島⋯⋯
奇しくも、一年中クリスマスを祝っている島国であるガトー公国と、同じ赤道近くにある常夏の島だった。
このため⋯⋯
ガトー公国に対する当てつけ的な何か、宣戦布告、犯行声明的ものであることは明白に思えた。
一方、トットフォーはロビーにおり、国防省の別の担当官から聞き取り調査のようなものを受けていた。
トットフォーは不安そうな面持ちでソファに浅く腰かけていた。どうして、自分の夫がそんな場所へ⋯⋯まるで、拉致でもされるかように飛ばされたのか?不安でいっぱいの表情だった。
豪州当局の能力を完全に超えた問題となるため、急遽、米国とガトー公国により救出作戦が模索され始めた。
つづく