ツインレイ
「そう言えば⋯⋯どこへ出るんだ?」
ポンスケがそう吐露する⋯⋯
「一時的ですぐに戻れるって話だったが⋯⋯たぶん、名古屋だろう」
タイラーがそう答えると、同行していた米軍関係者が叫ぶ。
「ここは東京じゃないですか! 私も横田基地に赴任していたことがあるので⋯⋯ちょっと、懐かしいですね! 六本木によく遊びに行きました!」
眼下に東京タワーが見える。
直後、タイラーは不安そうな面持ちに変わる⋯⋯
「ロシア大使館⋯⋯近くにあるよな」
「気になるか? 今は心強い仲間が一緒だろ?」
ポンスケがタイラーの過去を察し、不安感を紛らわそうと気をつかう。
「俺が神様タルパー事件を企てた際、東京のロシア大使館に駐在していたんだが⋯⋯屋上に心霊探知機が設置されているのを見たことがある。そいつは言わば、オカルト版エシュロンみたいなもんだ」
それに対して米軍関係者はこう答える⋯⋯
「そいつは想定済みです。ロシア側に察知されても、我が国が誇る世界一カッコいいハゲ、ブルース・ウィリスのイメージしか感じ取れないよう、先程説明した特殊コーティングに念封じしてあります」
「なるほど、プーチンの嫉妬心を煽るのか⋯⋯」
これに納得するポンスケ。
タイラーとポンスケ一行はそのまま池袋方向へ直進飛行し続けた。もう、間もなく⋯⋯自分たちの世界へ帰還するための霊道が出現するはずである。
一方、その地上では⋯⋯
一人の少女が自宅の屋根の上で、夜空の星を仰ぐように眺めていた。彼女の名は遠井穂都⋯⋯強い霊感を持つ女の子だった。両手には美少女のフランス人形を抱きかかえていた。
「感じる⋯⋯何かが飛んで来る!」
「これは⋯⋯タ、タイラーさんの気だわ!タイラーさんの気を感じるわ!」
「どうしたのエシャロット!」
穂都が両手で抱きかかえている人形はただの人形ではなかった。挿入型タルパと呼ばれる思念体が封じれたものだった。
厳密には⋯⋯
彼女のイマジナリーフレンド、エシャロットが乗り移っているものだ。
しかし、そんな地上での小さな変化を知る由のなかったタイラーとポンスケ一行が乗るヘリは、予定通り出現した霊道の中へ入って行き。穂都の頭上から気配を完全に消した。
つづく