作戦計画書

投稿日 2025.01.28 更新日 2025.01.28

 シロリン大聖堂、大司教執務室――

 大天使ガブリエルが再び書類のようなものを携えてやって来ていた。

 アルマーニのスーツを着こなし、見た目は完全なエリートサラリーマンのような様相をしていた。ルイヴィトンのバックの中からファイルを取り出し、それを倉臼へ提示する。

「誤配を事前防止するのではなく⋯⋯誤配したものを没収または破壊する⋯⋯そのやり方も良いでしょう。十分な実効性を見せつけて貰えれば、神様も納得して、クリスマス・プレゼント配送事業許可更新に応じて下さると思います」

 倉臼はファイルを開き、中の書類に目を通し始める。目を細め、瞳を左右交互に動かし続ける。

「その内容はサンタクロースの元祖、フィンランド代表の強い意向でもあります」

「なるほど⋯⋯正直、反対意見が多数を占めるだろうと懸念しておりました。しかし、これほどまでに⋯⋯みんな、頭を抱えていたんですね」

「そのようですね。私もクリスマスを愚弄する者には辟易しておりました。誤配の事前防止は本当に難しい。ならば⋯⋯クリスマス・プレゼント回収班、どうやら、多くの者が期待を寄せているようです。成功させましょう!」

 次の瞬間、倉臼の目頭が熱くなる。

「とりあえず、去年のクリスマスで⋯⋯もっとも悪事を働いた者⋯⋯まぁ、たくさんおりますが、名古屋から約一名を選びました。名古屋がもっとも誤配件数が多いようですし⋯⋯見せしめの意味でも大きな効果が見込めます」

 次のページをめくると、ターゲットに関する詳細な情報が掲載されていた。

「来週末の試しの作戦で⋯⋯まずはこいつを⋯⋯ですか」

「そうです」

 必殺仕事人のBGMが流れる⋯⋯

 倉臼はファイルを静かに閉じると、窓の外を見つめた。

 一方、その頃、クリスマス・プレゼント回収班の訓練キャンプでは、一定の成果が見えつつあった。

 流石は、スペツナズを始めとする、世界トップクラスの特殊部隊出身者から構成される部隊だ。わずか一両日中に訓練基準をクリアしていた。

 悪い子の自宅を強襲したら⋯⋯

 およそ、一分以内ですべてのオペレーションを完結させていたのだ。クリスマス・プレゼント回収率は80%で⋯⋯それ以外の場合、確実に破壊してプレゼントはなかったことにしてしまった。

 その時、ポンスケがタイラーを諭すようなことを口にした。

「俺も同行してヘリから隊員らの動きを見守るが⋯⋯あんたも立場上、ヘリから司令を出した方がいいんじゃないか?」

「いや、俺も地上へ降下する。この目で見ておきたいんだ! ターゲットの顔を!」

つづく