霊道を切り開く者
霊道士――
それは、こちら側とあちら側の世界をつなぐ道を開いたり、閉じたりすることのできる⋯⋯霊道のスキルが駆使できる専門家である。
普段、死者をこちら側の世界へ誘導する大切な使命を果たしているが⋯⋯
クリスマスともなれば、サンタクロース達をあちら側の世界へ送り出し、無事にこちら側に帰還させる重要な役割も果たしている。
とりあえず、クリスマス・プレゼント回収班専属の霊道士が手配されていた。
一体、誰が来るのか?
予定では本日の夕刻まで、タイラーの営む山荘へやって来るはずだ。
「霊道士の到着は遅くなりそうなのか? もう、四時だぞ」
「もう、そろそろだと思いますが⋯⋯」
ポンスケに促され⋯⋯国防省から派遣されてきた担当官が、そう困惑そうに答える。担当官はスマホを取り出し、霊道士へ電話をかける。
ガトー富士は夕陽で赤く染まりかけていた。
「あ、もしもし? トットフォーさんですか? 今、どちらにおいでですか?」
見知った名前を聞き、驚愕するポンスケ⋯⋯
「あ、はい。わかりました。では、お待ちしておりますんで、よろしくお願いします」
「⋯⋯」
「あと30分ほどで到着予定だそうです」
「おい、トットフォーって⋯⋯まさか、あのエルフの魔法使いのことか?」
「はい、そうですけど⋯⋯軍曹はトットフォーさんをご存知なんですか?」
「知ってるも何もウィキスタン戦争で大暴れしたヤツだろ! 核弾頭まで強奪した元テロリストだろ! 大丈夫なのか? てか、なんでこの国に住んでる!」
霊道士は通常の霊能者と異なり⋯⋯
霊道の開閉に莫大な霊力を消費するため、長きの修行によりそれを抱え込むができるようになった選ばれし者のみなれた職業だ。
このため、霊能者以外では霊力と互換性のある強い魔力を持つ⋯⋯意外なことに、長寿命なエルフの魔法使いの中から兼業でなる者が多かった。
「その辺は大丈夫です。もう普通の主婦に落ちついてます」
「普通の主婦がなんで来る?」
「でも⋯⋯霊道士も数が少ないんですよ。えり好みしていたら別のところに取られちゃいますよ」
「あいつの場合、霊道を切り開くと言うよりは⋯⋯波動砲でもぶっ放す勢いになる気がするから⋯⋯怖いんだよ」
つづく