狂ったサンタクロース
倉臼文成――
倉臼大司教の実父で、クリスマス界隈の古参、大御所とも言うべき⋯⋯サンタクロースのボス的存在だった。
トナカイによる配達を取りやめたバイク狂であり、悪い子のところへは爆弾を届けることで知られ、恐れられていた。
「みんな、最初からワシのように派手にやっておれば、ここまで問題は大きくならなかったんじゃ! とりあえず、助太刀に来てやったわい!」
ポンスケが呆れ顔でこう答える⋯⋯
「おっさん⋯⋯もう、時代が違うんだよ」
「何が違うんじゃ! てか、てめぇーら! なんだ? その玩具みたいなガンは? そんなんで悪い子は倒せんぞ!」
文成はヘッケラー&コッホをディスり始めた。
そして、懐からダーティーハリーと同じものを取り出すと、建屋に向かって乱射しまくり、あっと言う間にボロボロにしてしまった。
「おいおい⋯⋯俺たちの目的はクリスマス・プレゼントの回収だぞ」
しかし、タイラーは冷静だった。汗を拭いながら文成のところへ近づく。
「あなたが噂に聞くマッドサンタですね? 我々の作戦行動にマグナム弾は使用しません。除霊専用の弱いもので十分です」
「なんじゃ? つまり、帰れと言うのか?」
「そうではありません。あなたの投擲テクニックに関心しました。一体、どこで習ったんですか? あれは一般兵とは少し異なるプロの投げ方⋯⋯それに化学戦にもお詳しいようですね。完全に戦闘工兵の立ち回りです」
「ああ、若い時に第一次世界大戦で⋯⋯まぁ、あちら側の世界で生きていた頃の話、前世で培ったもんじゃ」
「わかりました。自白は切り札になります。クリスマス・プレゼントの隠し場所を吐かせる最終手段として⋯⋯あなたをスカウトしたい!」
こうして⋯⋯
超問題児サンタクロースがクリスマス・プレゼント回収班の隊員として加わることとなった。
その時、ポンスケの持っていた小型無線機に呼び出し音が鳴る。
「こちら、クリスマス・プレゼント回収班キャンプ、どうぞ」
《ご所望の品を届けに来たぜ! 軍曹!》
すると、上空からヘリコプターの音が聞こえて来た⋯⋯
側面にドクロとトナカイの角、ジングルベルを重ね合わせた部隊章がマーキングされたブラックホークが飛来して来た。さらに、森の中から装甲輸送車がこちらに向かって来ていることにも気づく。
「ようやく来たか⋯⋯あとは信頼できる霊道士の到着を待つだけだな」
つづく