宿敵同士の出会い
タイラーとリーの出会いは奇妙なものであった――
これも数年前の話だ。
主要各国でオカルトの軍事転用が密かに進んでいた。霊能力者や超能力者、タルパーなど、次々とスカウトされていた。これに応じない者は他国に奪い取られることを恐れ⋯⋯ロシアや中国のような国では以下省略。
いや、米国のCIAですら⋯⋯(ガクブル)
当然、各国同士によるスパイ活動も活発化していた。霊能者であるリーはそれを警戒して自宅に強力な結界を張っていた。
表向き、ロシアとはオカルト戦では中立、非干渉の協定を結んでいたが⋯⋯ロシアと中国同士による異能者合戦は露骨なまで表面化しつつあった。
もちろん、CIAによる遠距離通訳は厄介だった。
遠距離通訳とは⋯⋯
遠く離れた他人のタルパを操る技法だ。相手の承諾の元に実践すればただのリモート憑依、遠隔イタコだが⋯⋯先日もリーのタルパが勝手にアメリカ合衆国の国歌を歌い出すなど、CIA側からの嫌がらせも度々受けていた。
そんなある日の深夜⋯⋯
寝室で眠り就いていたところ、強力な気による霊的攻撃を受け、結界が破られる出来事が発生した。突然の不意打ちに驚くリー少佐⋯⋯
気がつくと、ベット横の椅子に足を組んで座るタイラーがいた。
慌てて枕元に忍ばせてあった拳銃に手を伸ばそうとしたら⋯⋯タイラーのサイコキネシス能力で、拳銃は手から滑るにタイラーの元へ飛んで行った。
タイラーは左手でリーから取り上げた拳銃をキャッチする。
「貴様!ロシアのスペツナズ超能力部隊にいるチベット人だろ!さぞ、俺たち中国人を憎んでいることだろうな。〇しに来たか?」
「ふん、興味ないな。今日はあんたと取引するためにやって来た」
「⋯⋯」
「俺は酒と女、金にしか興味のない破戒僧なもんでね。そんなもの興味ないわ」
「私が祖国を売るとでも思うか?」
「あんた⋯いや、リー少佐のことなら調べたぜ。生き別れになった妹さんがいるようだな」
「それがどうした?」
「俺は知ってるぜ。見つけたよ。あんたの妹のいる場所を」
「⋯⋯私を騙すつもりだろ」
すると、タイラーは一冊のファイルをリーに放り投げて、中身を確認するよう促してきた。ファイルを開いてみたら⋯⋯
それはロシア側のオカルト戦に関する国家機密文書だった。
つづく