萌ゆる第二形態
タイラーにも年頃の妹、ティムチンがいた⋯⋯
「守るべき⋯⋯大切な人か」
「そうさ。それだけでいいじゃないか」
ポンスケはロケットペンダントを閉じてポケットにしまうと、グラスのウィスキーを煽った。
ティムチンはカウンターの向こう側のシンクで黙々と洗い物をしていた。
一方、ゴンはそんな二人の会話に関心を示さず、カウンターの上でおつまみのナッツを口一杯に頬張り、ボリボリと食べていた。
それに呆れ顔となるポンスケ⋯⋯
「おいおい、まるでリスだな⋯⋯お前は俺たちのお目付け役として、大司教からいろいろと指示されているんだろ?」
「お目付け役?僕はそんな大層な役目は頼まれていないよ」
「じゃ、何だい?山荘の仕事でも手伝うのか?」
「うん、そうだよ。タイラーさん⋯⋯これから準備や訓練で忙しくなるだろうから、山荘の仕事を手伝うに言われて来たんだよ」
タイラーとポンスケが互いに顔を合わせる⋯⋯
体長が50cmにも満たない、小さい体をした管狐の妖精にできそうな仕事はないように思われたが⋯⋯
「あっ、二人とも⋯⋯僕を見くびってる?」
次の瞬間である。
ポンっと軽い音を出し、白い煙のようなもので身を隠しそれが晴れると⋯⋯愛らしい人間の男の子に姿を変えていた。
「どう?これなら山荘の仕事できるよね?僕は意外と力持ちだよ」
まるで、女の子のような男の子⋯⋯
ゴンは6~7歳くらいの男の娘に化けていた。
「きゃ!! 可愛い!!」
これを目の当たりにしたティムチンがはしゃぎ、カウンターの内側から出て来ると、ゴンを力一杯抱きしめて頬ずりをし始めた。
「じゃ~山荘の仕事、お姉ちゃんが教えてあげる!」
「うん、明日から頑張るよ! よろしくね!」
これに面食らうタイラー⋯⋯
「やれやれだぜ」
タイラーはかつての宿敵、リーとリーの妹を思い起こしながらウィスキーを飲みほした。とりあえず、思いがけない新人従業員の採用が決まった。一応、給与はきちんと払うつもりだ。
つづく