受諾

投稿日 2025.01.19 更新日 2025.01.19

 倉臼の相棒となるゴンは⋯⋯

 倉臼が以前どっかから召喚した精霊で、濃紺色の体毛をした管狐だった。普段はウィルクス市郊外にある自宅で留守番をしているが⋯⋯

 買い物や旅行などで、倉臼と一緒に外出する際は、倉臼の首元に巻き付き、常に行動を共にしていた。

 多分、オスじゃないかと思われる。

 今、二人は山荘の大浴場で日頃の疲れを癒していた。

「ぷはぁ、いい湯だぁ」

 倉臼が両腕を大きく広げて、湯舟の端に背もたれる。一方、ゴンは大きな風呂に大喜びして泳ぎ出す。

「こらこら、風呂の中で泳いじゃダメ!」

「えーいいじゃん! 今、僕らだけしかいないしぃ~~~」

「ダメダメ!」

 しぶしぶ、倉臼の注意に従うゴン⋯⋯

「文磨、タイラーさん⋯⋯ちょっと、迷っていた気がするよ。もしかして、気が変わるかも⋯⋯」

「さぁ、どうだろう。無理にお願いもできないし⋯⋯」

「絶対に気が変わるよ!僕のカンは当たる!」

「⋯⋯」

 直後、倉臼は真剣な表情で変わった⋯⋯

 なぜならば、ゴンのカンは今までに一度もハズレたことがなかったからだ。もしや⋯⋯そんな思いが芽生えた。

「そうだな⋯⋯お前のカンはいつも当たる」

 その時である⋯⋯

 浴場の扉が開く音がする。

「ああ、倉臼さん達でしたか⋯⋯湯加減はどうです?」

 声の主はタイラーだった。

「ええ、とってもいい湯です!」

 しばし、浴室内にぎこちない雰囲気が漂う。ゴンが押し黙るように⋯⋯浴槽の隅から、倉臼とタイラーの様子を伺う。

 タイラーは洗い場で体を洗いながら⋯⋯こう話を切り出してきた。

「倉臼さん⋯⋯さっき、リーとも電話で話しました。明日の朝にでも話そうかと考えていたんですが⋯⋯あの話、俺でよければ受けようと思います」

 倉臼とゴンは面食らうように驚いた。

つづき