戦友
運光星方教会シロリン大聖堂の裏路地商店街――
シロリン大聖堂の裏路地は独特な雰囲気が漂っていた。
大聖堂正面の大広場は、多くの信者や観光客でごった返す、観光スポットと化していたが⋯⋯その反対側の裏路地は、訳ありな者たちが店を構え、軒を連ねる小さな商店街を形成していた。
そのうちの一店舗が⋯⋯座布団工房LEEだった。
リーは生き別れとなった妹を探し求め、この世界に転生して来た⋯⋯
時刻は深夜10時に差しかかろうとしていた。この時間でも多くの人で賑わう大聖堂大広場と打って変わり、裏路地商店街は静寂に包まれていた。
仕事場で黙々と明日の準備をするリー⋯⋯
その時、リビングの電話が鳴り出した。
「なんだ?こんな時間に⋯⋯」
リーの妹が電話に出ると、兄を呼ぶ声が仕事場まで鳴り響く。
「お兄ちゃん! タイラーさんから電話だよぉ~!」
「あの話かな⋯⋯」
リーは立ち上がり、リビングへ急ぎ足で向かうと、すぐさま電話に出た。
「俺だ。紹介状は読んだか?」
《ああ、こんな夜遅くにすまない⋯⋯》
前世では二人は敵対する者同士であったが⋯⋯こうした奇妙な交流のようなものが続いていた。
とりあえず、タイラーからリーへ結論のようなものが伝えられたのだが⋯⋯
ただ、若干の迷い、含みのようなものもある様子に伺えた。だから、相談のため、電話を寄越して来たのだろう。
「なぁ、あの山林の中でなら有能な兵士が育てられる⋯⋯近くに訓練キャンプを設ければ、山荘の仕事とも兼ねられるじゃないか? それに⋯⋯クリスマスが終われば、翌年の春先まで山荘は冬季休業だろ?その間に⋯⋯」
《そうだな⋯⋯最初は戦うのが嫌だったんだが⋯⋯良い子にクリスマス・プレゼントが届かない事実に⋯⋯なんだか、俺は⋯⋯どうにも居ても立っても居られなくなって来た》
「何か手伝えることがあれば⋯⋯俺も手を貸すよ」
《ああ、何かあれば⋯⋯そちらの仕事に支障ない範囲でお願いするかもしれない。とりあえず、明日の朝、倉臼さんともう一回話してみるよ。俺みたいので良ければ⋯⋯やるわ》
「そうか、何かあれば遠慮なく言ってくれ!」
《深夜にすまない⋯⋯じゃ、切るわ》
「ああ、おやすみ」 ガチャ☆ツーツー
つづく